Homan由佳の英語で仕事力アップ

英語4技能とコミュニケーション力

Homan由佳の英語で仕事力アップ

大変ご無沙汰してしまい申し訳ありません。つい最近、大学入試に関連したブログを書いたような気がしていましたが、あれからはや1年。

腑に落ちた「作問者の意図」
早いもので、2019年がスタートした1月も終わろうとしています。ブログもすっかりご無沙汰してしまいました。最近、大学入試センター試験がありましたが、受験生の大敵インフルエンザが猛威をふるっています。今年は記録的に雨が降らない異常事態が続き、...

今年は新型肺炎への感染拡大の影響で、大学も対応に追われています。受験生はもちろん試験監督もマスク着用や手洗いとアルコール消毒が欠かせません。皆さん、「正しく恐れる感染予防」でくれぐれも気をつけてお過ごし下さい。

さて、昨年11月に大学入試英語民間試験の導入見送りのニュースを聞いてホッとした現場の英語教員が多いと思いますが、私もその一人です。民間試験の運用面や英語4技能の測定についてコンセンサスがないまま見切り発車で進められましたが、記述式問題の導入と同様、教育者や研究者間でも賛否両論に分かれており、課題はたくさんあります。ここはじっくり時間をかけて、意見の異なる専門家を交えて丁寧に議論すべきで、文科省が関係者と十分再検討して明確な方針を提示してくれることを期待しています。

検討すべきは、当然ながら受験生に負担をかけない民間試験導入の制度面や運用面が重要なポイントですが、そもそも「英語4技能」をどのように測定するのかなど、日本が目指す英語教育全体を俯瞰しながら議論を深めていただきたいです。

文科省によるこうした一連の取り組みは2012年から検討されてきた「高大接続改革」という高校教育、大学入試、大学教育の三位一体の教育改革が基盤となっています。この改革のキーワードである「思考力、判断力、表現力」の3つの能力を持つ人材の育成を目指しているわけです。

私は大学の英語教育改革もこの枠組みで進めることに賛成です。高校教育では英語4技能の基礎体力を身につけ、大学ではさらにその4技能を伸ばして実際に社会で通用するレベルまで引き上げる訓練の場が必要です。それは単純に英語のアウトプットを強化するための「英会話」の授業ではありません。相手の意図を受け止め、自分の意見をはっきり主張する(アサーティブな)コミュニケーション力を学ぶ学習環境が必要です。

以前ブログ(以下)で取り上げたように、コミュニケーションとは「他者との対話によってお互いが意味を理解しようと努力する行為」です。

英語教員のつぶやき 〜学生諸君、コミュニケーション能力を身につけよう〜
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目指すレベルは異なる文化を持つ人々と議論できるくらいの発信力です。こうしたコミュニケーション力は「話す」「聞く」だけではなく、「読む」「書く」を取り込んで訓練することによって向上します。高等教育の最終段階における「英語4技能」は4つの技能を統合したスキルとして捉えるべきです。英語で思考し、判断し、表現する訓練を重ねながら、高度な英語コミュニケーション力習得に近づくことができるでしょう。

大学で身につけたスキルや能力は社会に出てからビジネスの現場でさらに磨きがかかり、努力次第では強力なビジネスツールになるのではないでしょうか。幼少期で完璧な英語を話す環境に育った人は別として、大人の外国語学習で効率的なのは「読み書き」である、と言うのが持論です。特に、日常生活で英語が常に話せる環境にない日本のような国では、音声言語を中心に話しことばを重視する教育より、文字言語を中心に書きことばを重視する方が効果的であるのは実証研究で証明されています。

そして、立教大学名誉教授の鳥飼玖美子氏の記事を読んでから私の持論は確信に変わりました。以下、少し長いのですが記事を抜粋しますね。

4技能の土台は読解力、つまり「読む」ことです。読むことによって、単語の使い方や文章の組み立てを学び、それをもとに書くことを学ぶと、聞いてわかるようになる。そして話せるようになるのです。日本では多くの人が自己紹介や道案内などが「話す」ことだと勘違いしているようです。日常会話は決まり文句を覚えてしまえばいい。残念ながら、英語民間試験の一部はこの部分しか測れていません。

でも「話す」ことは、自分の考えや主張を英語で発信できるか、英語の論理で伝え理解しあえるかなのです。そのためには、英語という言語のルールを知らなければなりません。それが文法です。不要論を言う人もいますが、赤ちゃんが自然に言葉を獲得する母語と、意識して学ぶ必要のある外国語は違うのです。

高校までは英語の基礎を作り、その上で高校卒業後に、大学や社会で話す力を磨けばいいと考えます。そのためには、中学校の英語教育に資源を投入すべきです。中学生は記憶力や吸収力が抜群で、母語を土台に分析的に学ぶこともできます。少人数クラスにして、教員の質と数を確保すれば、成果は出るはずです。

(中略)

「話す」というのは、相手や状況、文化などの影響を大きく受けるので、50万人が受ける共通テストで公正公平に測れるものではないと思います。

朝日新聞記事 2019年11月18日より)

英語で意思疎通できるレベルに到達するには、単に決まったフレーズを覚えてしゃべるだけでは不十分です。特に、読む→書く→聞く→話すの学習プロセスの効果は言語習得論の面からも、私自身の学習体験からも納得がいきます。鳥飼先生は入試問題の「話す」の測定の難しさにも言及していますね。「話すは文化の影響を受ける」という部分は目から鱗でした。この話の続きはまた!

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