AI時代の夢の翻訳機

Homan由佳の英語で女子力アップ

最近気になるAI翻訳機

最近気になるのがポケトークと言う商品です。そう、「74言語に対応、まるで通訳がいるかのように対話できる夢の翻訳機」のキャッチフレーズでお馴染みの小型のAI翻訳機です。ボタンを押して話しかけるだけで選択した別言語ですぐに音声が再生されます。

多機能機電子辞書と同じくらいの価格帯も魅力です。74言語搭載なので、空港など多言語が飛び交う場所での活躍を期待されているそう。さすがにアゼルバイジャン語とかズールー語を使う機会は私はないですが、フランス語やルーマニア語など、いつもは英語や日本語でコミュニケーションをとっている友人と母国語で会話できたら楽しそうかも。

先日の新聞に、三菱電機製「10言語を同時に聞き分ける」という同時通訳機が発売予定と書いてありました。日進月歩のテクノロジーの進化、すごいです。

大らかなグローバル性

ポケトークを実際買うかどうかは別として、この商品のCMがなかなか面白いのです。最新の「服屋編」は結構ツボにハマりました。

なぜ面白いかというと、笑いの中に「日本のグローバル化」という真面目なテーマを感じとることができるからです。このCMでは1つの事柄に対して様々な人種が自国の言語で語り合うというリアルな多文化社会が透けて見えます。

ただ、「歯が出ている」という明石家さんまのキャラをネタにした文章を翻訳機に入力する場面には正直驚きました。何しろこのような身体的特徴は60年代のハリウッド映画、例えば『ティファニーで朝食を』に登場するMr. ユニオシという日本人のステレオタイプを彷彿とさせるので、ここにかなり強烈なアイロニーを感じてしまったのです。

ところが、さんまさんの大きな歯を外国人全員が羨ましがるというストーリー設定になっているので、最後には爽快感も味わえます。これは(よくある)私の考え過ぎかもしれません。でもたとえそうだとしても、つまりこの解釈がCM制作者の意図とはまったく異なるにしても、このCMが引き出す大らかなグローバル性が私はとても好きです。

通訳において「機械が人間を超えられない領域」とは

さて、AI翻訳機の機能についてですが、精度はかなり良くなっているそうです。大学で学生の英作文をチェックする時、直感と経験から「あ、これはネットの自動翻訳使ってる」とほぼほぼ正確に言い当ててきましたが、これから厳しくなりそうです(笑)。

スマホでSiriを使う時代、AI翻訳機に対してそれほど感動はないかもしれませんが、昔、国際会議の同時通訳者に憧れて通訳スクールに2年ほど通ったことがある私にとっては、こうした「夢の翻訳機」の登場には隔世の感があります。相応の努力と相当な投資をしてもなかなか習得できなかった通訳技術を、ポケットサイズの安価な翻訳機が簡単に代用してくれるのですから!もちろん、「翻訳機」が「通訳者」の代替になる日は(来るとしても)随分先のことでしょう。まだ、機械が人間を超えられない領域があるからです。

先月末にベトナムで開かれた米朝首脳会談。テレビの実況中継で私がその一挙一動を目で追っていたのは、主役のトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長というより、その側で片時も離れず張り付いていていたそれぞれの同時通訳者の美しいお二人でした。「通訳以外はシャットアウトの米韓のトップ会談で何が話されたのか知る由もありません。」というアナウンサーの語りは、言い換えると「通訳だけがこの密談で何が話されたのかを知っているのです。」ということになります。もちろん通訳者に守秘義務がありますので漏れることはありませんが、世界最高レベルの機密情報をこの二人は知っているのだと考えると、彼女達の表情から何か得るものがないかと気になって仕方がなかったです。

「通訳は黒子でなければならない」という鉄則があるのですが、これは外見で目立ってはいけないという意味ではなく、自分の考えを一切封印して話者と一体になることです。よく、サッカー選手の専属通訳者が本人と同じくらい感情をむき出しにして通訳している場面を見かけますが、これはまさに話者の魂が乗り移っているのでしょうね。自明のことですが、文字や発話を1つの言語から別の言語へ訳すという作業は、単純にことばの変換をするだけではありません。前後の文脈から判断して、そこに適切な単語や表現を選択しなければならないわけです。加えて、その場の雰囲気、話し手と聞き手の思惑などすべての状況(コンテクストと言います)を念頭に置いて訳出しなければなりません。通訳において「機械が人間を超えられない領域」がそこにあると思います。

AIと人間を共存させるスタンス

増刷し続けるベストセラー「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の著者は東大合格を目指す「東ロボくん」を開発した数学者でAI研究の先駆的存在の新井紀子氏です。新井氏が繰り返し教えてくれるのは「AIは意味を理解しない」ということ。AIやロボットは膨大なデータを記憶し計算式を入力すれば正確に出力する「計算機に過ぎない」ということです。

通訳においては、意味=コンテクストを理解することが非常に重要です。将来、AIにあらゆるコンテクストを数値化して計算式を入力できれば、完璧な通訳ロボットの開発も可能かもしれませんが、近い将来に実現するとは考えにくいです。マシン vs 人間の対立構図はいつの時代も議論されてきましたが、AI時代の到来と言われる昨今、AIができることとできないこと、人間ができることとできないことを見定めて、バランス良い共存を目指すのが議論の着地点のように思えます。

英語学習においても、AI翻訳機と学習アプリとの連携が増えてきているようなので、以前に増して学習ツールの選択肢は広がっています。皆さん、AIと人間を共存させるスタンスで学習を進めてはいかがですか。「AIは意味を理解しない」という大前提で、例えば、AIで学習の効率化を図りながら、且つ人間にしかできない「意味を理解する力」を強化するとか。最強の英語学習者に近づけるかもしれません!

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Yuka Homan

Yuka Homan

ジーワン・コミュニケーションズ取締役。立正大学教授。専門はメディア英語、英語教育。 仕事で英語と長く接してきた経験をもとに、英語を外国語として学ぶ者として、また英語を教える立場から日々感じることや、内面から女子力をアップするようなちょっとした知識もとりいれつつ、徒然なるままに書いていきたいと思います。
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