英語教員のつぶやき 〜学生諸君、コミュニケーション能力を身につけよう〜

Homan由佳の英語で女子力アップ

海外留学の効用と日本の英語教育の問題

海外留学を希望する学生が増えています。私が勤務する大学でも夏季休暇を利用した短期留学プログラムが好評で、特に学部主催の研修プログラムの希望者数は予想を上回りアメリカ渡航は無事催行されましたが、少し前は定員割れで海外研修を断念した年もありました。思えば、2010年頃から5、6年間ほど「海外留学を希望する日本の若者が減少している」という記事を新聞や雑誌でよく見かけました。アンケート調査によると「言葉の壁」や「金銭的理由」が学生の海外留学離れの主な原因だったようですが、記事は総じて「若者の内向き志向」というキーワードで紙面を飾っていました。

大学生、留学「意向なし」4割 強い内向き志向 2013/8/18
高校生、やはり内向き志向?「留学したくない」約6割の意味 2013.5.13

正直なところ、当時は「グローバル」という言葉が社会に浸透している割には学生の意識が海外に向いていないギャップに違和感がありましたが、ここ数年、日本の若者を形容する「内向き志向」はメディアでも影を潜め、文部科学省が発表している海外留学生の比率を見ても、海外留学生は確実に増えています。

「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について 文部科学省 平成31年1月18日

文部科学省:「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について より

今の大学に勤務して約10年になりますが、毎回、短期留学から帰国した学生に共通して見られる顕著な変化があります。それは英語力そのものというより、「話す姿勢」です。留学前は質問しても自信がなくてモジモジして小さな声で答えていた学生が帰国後には声のトーンが上がり、表情は豊かに、アイコンタクトを意識するようになります。物怖じせずに自分で主張しなければ取り残されてしまう、というサバイバル精神を異文化体験から学んだのでしょう。

自分が「ガイジン」になることで今まで考えたことがなかったことが見えたりするので、若いうちに自分の常識が世界共通ではないことを実感し、広い視野で物事をとらえながら、自分の意見を英語できちんと言える人になって欲しい、海外での生活体験はその意味でプラスになると学生に伝えています。

ただ、現実は厳しく、特に短期留学から帰国した学生は口を揃えてホームステイ先や留学先で「言いたいことが通じなかった」と悔しそうにエピソードを報告します。もちろん単語がわからない、言い回しがわからないという語彙力不足は仕方がないと思いますが、中学と高校で6年に渡って英語の授業を受けてきたというのに、挨拶程度の簡単な会話で苦労する、というのは日本の英語教育はやっぱりおかしい。。。と思わずにはいられません。

日本の英語教育の歴史を振り返る

私が英語を教える職業に興味を持ったのも、このジレンマからの脱却が出発点でした。「日本人の英語発信力」はどうしたら向上できるのか。ここでは日本の英語教授法の歴史を振り返ることは省きますが、日本の大学の英語教育の流れに少し触れてみます。

1991年、文部省(当時)による大学設置基準の大綱化によって教養教育が崩壊し、日本の大学の英語教育は大きな転換期を迎えました。スキル教育を重視する潮流の中で、多くの大学が「共通教育」を採用し、大学1年生の英語が必修科目として全学共通科目として組み込まれ、英語ネイティブ講師が担当する「英会話」の科目がカリキュラムの目玉となり、コミュニケーション重視の教授法が本格的に取り入れられるようになったのです。(詳細は拙著『大学における英語教育とメディアリテラシー』(2017) をご参照下さいませ!)

しかし、そんな国をあげての改革から30年近くが経つというのに、残念ながら学生の英語運用能力が劇的に変化したとは思えません。グローバルな動きが急速に進む中、日本がその後ろ姿を慌てて追いかけているような状況で、国際社会で通用する日本人の英語力向上の問題は喫緊の課題です。

「コミュニケーションをとる」能力育成の重要性

そんな重い課題に挑むための解決法はもちろん1つではありませんが、個人的見解としては、1990年代から日本で盛んになった「コミュニケーション重視の教授法」 (communicative approach) の見直しがあげられると思います。日本の英語教育現場では「聞く」「話す」という2つの能力を別々に向上させることに注力して「コミュニケーションをとる」能力の育成は軽視されていたように感じます。

communication はあくまでinteractionであり、他者との交わりによって成立するものです。第二言語習得のプロセスに必要なnegotiation of meaning (意味の交渉)ー 他者との対話によってお互いが意味を理解しようと努力する行為 ー を「英会話」の授業で指導できる教員が少なかったのかもしれません。いえ、指導力のある教員がいたとしても、ディスカッションやディベートが浸透していない日本の教育現場でこうした能力を鍛えるためにはより体系的なカリキュラム編成などが必要なのかもしれません。

月並みですが、グローバル社会では、異なる文化的背景を持つ人と意見交換ができるコミュニケーション能力がますます求められます。教育の変革のタイミングは20年サイクルと言われるように、1991年の文部省主導の大学の教育改革からまさにほぼ20年です。しかし、来年度から始まる大学入試改革の目玉の一つである英語の外部試験導入など混乱を極めている今の状況は、日本における今後の英語教育の指針や方向性が定まっていないからではないでしょうか。英語教育のフレームワークの入れ替えの時期がもうすぐ到来する、そんな予感がします。

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Yuka Homan

Yuka Homan

ジーワン・コミュニケーションズ取締役。立正大学教授。専門はメディア英語、英語教育。 仕事で英語と長く接してきた経験をもとに、英語を外国語として学ぶ者として、また英語を教える立場から日々感じることや、内面から女子力をアップするようなちょっとした知識もとりいれつつ、徒然なるままに書いていきたいと思います。
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